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CDアルバム「愛の贈り物」レコーディングを終えて  黒田勝也が高橋晴美にインタビュー

 梅雨の晴れ間に真夏を感じさせるような今日この頃ですが、皆様お元気でいらっしゃいますか。高橋晴美が歌うCDアルバム第2弾「愛の贈り物」が、6月29日にやっと出来上がってまいりました。

  大変お待たせして本当に申し訳ございませんでした。

今回はCDが出来上がるまでの長い道程を、レコーディングで大変お世話になったミキサーの黒田勝也さんと振り返ってみたいと思います。



黒田:
「愛の贈り物」のCD制作、長い間お疲れ様でした。とても愛のこもった素晴らしいCDになりましたね。今回の制作にあたり、晴美さんにいろいろ伺ってみたいと思います。1曲1曲について、特に意識したものはどんなところですか?

晴美:そうですね…如何に、作品が誕生した時の想いを込めて伝えるかという事でしょうか。

黒田:本当に想いが伝わってきますね。レコーディングしていても何度かジ〜ンとしてしまいました。例えば「約束~父へ~」とか「母に贈るうた」とか…。

晴美:そもそも、このCDを作りたいと思ったきっかけは「約束~父へ~」が出来た時でした。父は私が弾くピアノや、私が作る曲を本当にこよなく愛してくれていました。父が亡くなる5日前、ウォークマンを聴きながら「ほー…」と顔をくしゃくしゃにして感嘆の声を出したのです。弟が「いったい何の曲を聴いているんだろうね」と確かめたところ、CD「愛のピアノ」の中の「星降る夜に」でした。父は最後の最後まで私の作品を聴いてくれてあの世に旅立って行ったのです。父が息を引き取る前、父の手を握りながら私は父の耳元で約束しました。「必ず音楽の道を歩き続けて、皆に愛を届けてゆくからね!パパありがとう!」と。何も解らないはずの父が私の手を2回握り返し、その後静かに息を引き取りました。最後まで父は身をもって「生き切る事」を教えてくれました。そして「約束~父へ~」の曲が誕生したのです。この曲が出来た時、CDアルバムの最後にこの曲を入れようと思い立ったのです。丁度父の一周忌にスタジオで「約束」を歌いました。その時本当に父に会いたいと思い何度か胸が詰まりました。歌い切った時には父に届いた様な深い達成感が心を満たしてゆきました。

黒田:実際「約束」を聴いている時鳥肌が立ちましたよ。

晴美:もう一つこのCDを作るきっかけとなった曲が「母に贈るうた」です。この曲が生まれたのは、1995年、パリの在仏日本大使館でのデビューコンサートに出かける直前でした。それまでの音楽人生を振り返ってみると、幼い頃から母と共に歩んだ音楽の道のりが走馬灯のように脳裏を駆け巡りました。懐かしい思い出と感謝の思いが一気に込み上げて来て詩と曲が同時に生まれました。初演はその年の阪神大震災チャリティーコンサートで、小松原るなさんに歌って頂きました。前から、初めてのコンサートには母に曲をプレゼントしたいと思っていたのですが、母は本当に驚いて私が生まれた時に次ぐ感動だと言って喜んでくれました。その後プロの歌い手さんに歌っていただいてCDを何枚かリリースして来ましたが、私は自分でも「母に贈るうた」をピアノで歌って母にプレゼントしたいと思い始めたのです。そして、2002年に6枚目にして初めてピアノソロアルバム「愛のピアノ」を作成しました。

黒田:あのレコーディングは大変でしたね。指にテーピングして痛みに耐えながら弾いていましたね。でもその痛い指にもかかわらず想いが入るとメーターが振り切るくらいのパワーが出て驚きました。

晴美:「母に贈るうた」のサビはどうしても想いが入り過ぎてしまってね・・・指の痛みなど全く忘れて弾いていました。でもお陰様であのCDは、結婚のお祝いや色々なプレゼントとしても本当に大勢の方に喜んでいただいております。


黒田:ANAのスカイチャンネルにも2度採り上げられましたからね。

晴美:そうでしたね。その後、今度は歌のCDアルバム「高橋晴美 愛をうたう」をリリースしましたが、その直後から、いつか「母に贈るうた」を自分で歌って母に贈る事が出来たら…と無謀な夢を抱き始めてしまったのです。あの難曲(笑)「母に贈るうた」に挑戦する事自体、無鉄砲過ぎるのではないかと何度か躊躇しました。歌っては聴き返し、歌っては聴き返し、何度諦めかけたかわかりません。2オクターブもある曲で、Aメロの内なるつぶやきから、サビの外に向かって歌いあげて行く対比、そして、献上する一歩引いた歌い方、その中に溢れる愛と感謝を充満させ、しかも決して暗くはならないで、温かさと感謝一色に歌いあげる。ブレスの位置ひとつとってもこだわりがある…。自分で作っておきながら、あらためて歌ってくださった歌い手さんに「ごめんなさい!」と頭が下がる思いでした。何しろ、合唱譜に事細かに指示を書いてしまっているので自分がそれに背く訳にはいかない!お陰様で、レコーディングの度にそれまで出来なかった部分が段々とクリアーされてゆきましたから、そういう意味では非常に歌い甲斐のある1曲でした。

黒田:しかし、晴美さんは殆んど歌の練習をしないのに、レコーディングの度に上手くなる。本当に不思議ですね。

晴美:母にも夫にも内緒で歌のレコーディングをするくらいですから、家では全く練習出来ません。もし上達しているとしたら、やはり聴き返して、次にこう歌ってみようという思いになり再び挑戦するという繰り返しでしょうか。スタジオでのこの繰り返しは、1回1回が真剣勝負なだけに大変貴重な練習の場になっているのかもしれません。

黒田:やっぱり聴き返すのは大事なんですかね。

晴美:とても大事だと思います。自分のへたくそさに耐えられなくなくなりますからね。(笑)耐えられないからどうしてもクリアーしたくなるんです。自分自身が納得のゆく歌になるまでは相当時間がかかりました。でも何と贅沢な時間でしょうか!それにとことんお付き合いくださるエンジニアーの方も大変ですよね。(笑)

黒田:アッハハ、こちらもお陰でプロツールスを使いこなせるようになりましたよ。これは晴美さんのお陰です。

実験台に使って申し訳ありませんでした!それにしても、「少年」や「Lost Love」の様な曲もとても良い感じで歌われていますね。

晴美:「少年」は男歌なので私には歌えないと思っていましたが、挑戦してみたくなりました。歌の世界は、自分が主人公となって芝居を演じているようで本当に楽しいです。「少年」は自分が宝塚の主人公になったような気分で歌いました。(笑)1曲1曲、作った時の事を思い浮かべたり映像を思い浮かべたりしながら想いを込めて歌っていると、本当に悩みの全てを忘れますね。 「Lost Love」の原曲は、中学2年の時に出来たものなのです。雙葉時代は、親友(旧姓:吉田英子さん)が詩を書き、それに曲を付けるという歌の交換日記の様な事をしていました。その中でも「涙こらえて」が大変に気に入っていました。あれから四半世紀経った頃、原曲の4/4を6/8に書き換え歌詞の2行を彼女の詩をそのまま生かし、続きを作成して「Lost Love~たとえ愛が消えても~」というタイトルを付けて発表しました。音楽之友社から2000年に女声合唱としても教材に採り上げていただいた曲なのですが、私自身、中学時代の親友との懐かしい思い出が宿っている作品なので、是非自分で歌って残したいと思いました。

黒田:あの曲はリズムにラテンのノリを感じさせる特徴がありますが、晴美さんの世界はジャンルを超えた世界だともいわれ ますね。今回もボサノバが入っていますがあれも実にお洒落ですね!  

晴美:「Beautiful Days」は、実はこの曲個人的には一番アレンジが気に入っている曲なんです。ほとんど全部のパートが即興演奏で出来上がった曲です。シンセサイザーに入れて行く時点で、音を選び自分の気持ちの赴くままに弾いたのですが、結果的にどこも直さずそのまま使いました。極自然だから好きなのかもしれません。驚いたのは試聴盤を聴かれた佐古さんから電話があった時、一番先に採り上げて口にされた曲がこの曲だったのです。彼は、ギターリストの名前まで言い当てました!エンディングのあのギターフレーズは横田君ならではですからね!とても気に入ってくださったらしく高揚して話していらっしゃいましたが、私が最も納得のゆく1曲でしたのでまさにビンゴ!という感覚でしたね。  

黒田:即興と言えば、「心うきうき」もそうでしたよね。  

晴美:そうそう!ファントム(シンセサイザー)が届いた時、おもちゃを手にした子供のように興奮して色々な音を出して遊んで   いたんですよね。そうしたら「Du! Du!」とか「Pa! Pa!」とか出てきて、楽しくなって書きかけの曲が全く別のサビになってしまって…あれも即興でしたね。(笑)

黒田:それぞれ、色々な思い入れがあるんですね。「待ちわびた命」は魁星君の声がマッチしてとても良いですね。

晴美:魁ちゃんは本当に可愛い…。家で真理ちゃん(杉浦真理さん)のレッスンをしていた時、真理ちゃんの歌を聴きながらウーウーと反応する魁ちゃんを見ていて、温かな親子の絆を感じました。直ぐに、真理ちゃんに魁ちゃんの声とガラガラの音を録音して送ってほしいと頼みました。真理ちゃんへの出産お祝いに歌った「待ちわびた命」に、魁ちゃんの声も入れてプレゼントしよう!とひらめいた瞬間でした。スタジオで歌っている時に魁ちゃんの写真が携帯メールで送られてきて、その魁ちゃんを心の中で抱きしめながら再度レコーディングしました。本当に魁ちゃんが愛おしくて愛おしくて何とも幸せに満ちたレコーディングでした。

黒田:真理ちゃんや剛ちゃん、ご家族の方々に本当に喜んでもらえて良かった!僕も嬉しかったです。しかし、本当に愛が滲み出ていますよね。「星降る夜に」を聴いても何ともいえずあったかい!あの感じは、是非合唱を歌う人達にも聴いてもらいたいですね。

晴美:「誰かを想い、誰かのために心を込めて歌う」これが歌の基です。音楽は「愛」そのものですから…。

以前にもお話した事がありますが、かつてトスカの「歌に生き愛に生き」を歌って父のハートを射止めた母が、長い間私達子供を育てる事に専念し歌を歌う事を全く辞めてしまいました。その母が50年経って再び歌ったのは、寝たきりになった父の枕もとでした。毎晩父だけのために歌う母の歌は、少女の様な美しく澄み切った声でね…、父の部屋の前に立って聴いているといつも胸が詰まりました。誰にも真似の出来ない父への愛に満ち溢れた歌でした。父は、母の歌を毎晩聴けて本当に嬉しそうでした。「愛」の宿った歌は自然に相手の魂にまで届きますからね…。母の子守唄は、歌の原点だと思っています。

黒田:いい話ですね…。音大を出てプロになってステージに立って歌っていても、心に訴えて来ない歌では淋しいものがありますね。兎も角、晴美さんの歌の言葉と言葉の間や感情の入れ方が素晴らしいですね。言葉尻の置き方に何とも言えない訴えるものがある。例えば、約束の「会いたい」という言葉ひとつでも、聴く度に鳥肌が立ちますね。魂が宿っているというか…訴えてきます。 又、アルバム最後の「夢咲き島」もエイサーが入って良いですね!あの曲は沖縄初演の時から大反響でしたが、すっかり晴美さんの持ち歌になってしまいましたね。

晴美:沖縄の初演は忘れられません。生まれて初めてお客様の前でマイクを持って歌うのが1000人のお客様の前ですから、まさに清水の舞台でした!しかし、コンサート終了後ロビーに行く階段を上っていると「夢咲き島のCDはありませんか?」という声が聞えてくるではありませんか!耳を疑いましたよ。皆さんがこのCDを訪ねて売り場に来られるなんて…本当に嬉しかったですね…。

沖縄の方に受け入れていただけた事が本当に嬉しかったですが、歌っていて沖縄の方々の温かさに包まれているのを肌で感じましたからね…。

黒田:いやー、あの時の盛り上がりはすごかったですね。しかし…三線の音も良かったー。

晴美:本当に…。今回も始めは東京の方で録音しましたが、結局沖縄から横目さん(2010年三線最優勝者)をお呼びして録音し直しました。又、CD収録の最後に島太鼓ではなくエイサーの太鼓を入れたのも良かったです。そのために沖縄までりんけんバンドのライブを聴きに行きました。エイサーの太鼓を入れたいと思い始めてから上里さんと出会えるまで、結構時間がかかりましたね・・・だから尚更の事、4月にスタジオでエイサーの音を聴いた時は本当に感動でした!結局「夢咲き島」がこのCDの最後を飾る歌となりました。

黒田:そうでしたね…。晴美さんの想いがぎっしりと詰まったアルバムになりましたね。でも、本当にこのアルバムは何回レピートして聴いても飽きないです。

晴美:ありがとうございます。今までの人生を振り返りながら歌っていると、辛かった事も嬉しかった事もみんなみんな美しく輝いていてね…。全ての事をいとおしむように歌いました。本当に幸せな時間をいただきました。音楽は一生かかっても100%はあり得ないと解っていますが、音楽には挑戦し続けたくなる魅力があるんですよね。いつも、手招きされているような…。私にとって音楽は永遠の恋人です。

これからも、この道を歩き続けて行きたいと思いますので、これに懲りず今後共宜しくお願い致します。

黒田:こちらこそ、もう用はない!と言われるまでは頑張ります!(笑)


「愛の贈り物」を聴いて 佐古 則興

 期待と不安が驚きに 私はこのアルバムを試聴した後、期待と不安が驚きに変わった。と同時に1996年の渋谷東邦生命ホールでのコンサートの感動の記憶が蘇ってきた。それはあの時と同様に高橋晴美の新しい発見だったからだ。

 ここにいるマルセリーノ 私は今まで多くの歌い手によって高橋晴美の曲を聴いてきた。しかしその多くはその曲を最初に歌った歌い手のコピーでもあった。しかし高橋晴美の歌唱はオリジナリティに満ちていた。彼女独特の音符と音符の間、言葉の抑揚、発声そして何よりもその作品に対する深い愛が大きな力となって私の心の部屋へストンと落ちてきたのだ。技巧的に上手く歌おうとしたのではなく、如何に伝えようとしたからだ。それは幼子が母親に何かを伝えたいときと同じだ

 私は彼女の作品を聴きその人柄を想うとき、スペイン映画の名作「汚れなき悪戯」のマルセリーノを思い出す。修道士たちに育てられた5歳のマルセリーノは無垢ないたずらっ子で修道院のアイドルだった。そのマルセリーノと天真爛漫な高橋晴美が時に重なって見える。マルセリーノは幼くして天国に召されたが高橋晴美は今ここにいる。

 聴く者が、汚れて疲れた心を洗い流し、癒される秘密はそこにあると思う。

 歌ってみたぁーい 15年前に初めて「母に贈るうた」を聴いたときから私はこの曲を歌ってみたいと強烈に思っていた。誰に聴かすわけではないただひたすらに歌いたいと思った。ライブハウスに何度も通い曲はすっかり頭に入っていた。レッスンの日取りが決まり当日喜び勇んで彼女の自宅にはせ参じた。しかし結果は散々だった。 レッスンが想像以上に厳しかったのだ。というより私が譜面どおり歌えないのだ。「あなたは小松原さんの真似をしすぎている。そんなに崩して歌うのは10年早い」。そしていまだに満足に歌えないのだ。

 歌うことの難しさを一番知っているのは作者本人であろう。それゆえ納得ゆくまで歌いこんだ結果4年という歳月が流れたのであろう。

 答えはCDの中に あれから15年世界を飛び回り、いくつものコンサートで成功を治めCDを世に出してきた彼女が、なぜ長い歳月をかけて自身の歌でCDを製作してきたのか。その答えはCDの中にある。さあ皆さん一緒に探しに行きましょう、「愛の贈り物」を。


■新しいCDアルバムリリースのご案内
 ☆愛の贈り物☆ 5月19日発売中!

■オンライン上でCDの購入申し込みができます…

 

 



配信のお知らせ

 この度11月24日より、高橋晴美のCD(「ひとつ」 「My Eternal Love」 「Delight Song」 「高橋晴美in ワルシャワ」 「しあわせのせて」 「愛のピアノ」 「高橋晴美 愛をうたう」「愛のコンサート」 の8種類が全国配信されました。 MUSICO、レコチョク、My Sound(ヤマハ)などのサイトからアーティストの名前、または曲名を入れて検索してください。お好みの曲がダウンロード出来ます。QRコードから、携帯にダウンロードも出来ます。是非ご活用ください。



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