高橋晴美の音楽ネットワーク ニュースレター 

 立春も過ぎて、段々と日が長くなってまいりましたが、皆様お元気でいらっしゃいますか。 節分と言いますと、全国的に「福は内!鬼は外!」の声が聞こえてきます。私にとりまして、今年の節分は生涯忘れる事の無い大きな節目となりました。私事ですが、今回は敢えて、ピアニストで音楽教育に一生を捧げた義父の事を綴らせていただきたいと思います。

こんなに美しい空の下で
 夏に咲く源平蔓が美しい花を咲かせ、快晴の空の下富士山が雄大な姿を見せてくれた美しい日に、私の大好きな義父が99歳の生涯を生き切り、旅立ちました。「父危篤」の知らせを受けたのは2月3日早朝、直ぐに支度をして京都に向かいました。新幹線の窓から見える雲一つない青空、こんなに美しい日に父は旅立つのかと、車窓から見える富士山を記録にとどめたくて必死で写しました。その直後、義兄から送られてきたメール「父は旅立ちました」。夫と「間にあわなかったね…」と言いながらも、その3日前に義父に会いに行って本当に良かった・・・としみじみ思いました。
 
 義父が旅立つ3日前、私達は「祝福のうた」のCDを持って京都のバプテスト病院のホスピスまでお別れに行きました。義父のベッドの横にはCDプレーヤーとヘッドフォンが置いてあり、何枚かのクラシックのCDを聴いていたようですが、義父は既に何も喋れなくなり、殆ど目を閉じたままの状態でベッドに横たわっておりました。夫の「生きているうちに聴かせてあげなければ!」の強い一言に、ヘッドフォンを装着し「祝福のうた」のCDをかけました。すると、それまで荒い呼吸をしていた義父がだんだんと穏やかな呼吸になり、「星降る夜に」「ありがとう」と曲が進むにつれ、身体を動かし、明らかに聴いている顔の表情になりました。4曲目のスコラ・カントールムの「祝福のうた」の時には、じーっと聴き入っているような様子が伝わってきました。曲が終わったとたんに夫が義父の耳元で「お父さんどうでしたか、晴美が作った曲ですよ」というと、何か必死に言おうとしている様子が窺われました。私も義父の耳元で「お父さん、ありがとう!愛してる愛してる愛してる!」と叫ぶとその途端、「う〜う〜」と何か懸命に伝えようとして声を出し、私に向かって手が動き出したのです!慌てて、お父さんの手に触れると、あたたかい手で柔らかく握り返してくれました。そして、これが義父との最期の対話となりました。
 
 義父は大変運が強い人で、十余年前に足の癌で片足切断と言われて身辺整理をして入院した時も、神経すれすれのところに癌細胞を覆う薄い膜が出来て癌細胞だけを取り除く事が出来片足切断をまぬがれました。義父のお世話に行かせていただいた時も、義父が眠りから覚めると「天使が素晴らしい合唱をしてくれた」とか「今、ベートーベンを弾いていた」等など義父が見る夢は全て音楽の夢でした。しかも毎回、素晴らしい感動を受けて目覚めるのです。なんと前向きなのだろうか…と、お世話をさせていただきながら学ぶことだらけでした。
 
 その半年後、義父は京都からたった一人で松葉杖をついて池袋東京芸術劇場で行った「高橋晴美の世界 愛のコンサート」を聴きに来てくれたのです。コンサート後の義父の感動は大変なものでした・・・今でもあの義父の喜ぶ姿が忘れられません。そして、7年前には脳梗塞になり、やはりもう駄目であろうという事で最期の面会に行った時の事です。病院のベッドに横たわる義父の枕元で「お父さん!晴ちゃんですよ!愛してる愛してる愛してる!」と叫んだ途端、義父が目を覚まし、麻痺していない方の手を必死になって私に差し出してきたのです!そして、義父は一命を取り留め、その後長いリハビリ生活に入りました。かつてはピアニストであった義父の片手は全く動かなくなったにもかかわらず、義父はいつも前向きで、ある時はバプテスト病院の教会に置いてあるピアノで片手で一緒に連弾をして楽しみ、ある時は全く動かなかった方の手が動くようになったと見せてくれ、車いすから立ち上がる練習をして見せてくれたり・・・、義父に会いに行く度に、私たちは逆に義父に励まされて帰りました。義父は、まるで灯台の明かりのように、歩むべき道を照らしてくれました。


(義兄夫婦に囲まれて)
そんな義父が、大きな目標にしていたのが100歳のお祝いの日でした。昨年の9月の敬老の日に100歳(数えで)を祝う表彰状を国と京都府と京都市からいただき、義父の長年の夢が叶いました。それから、数カ月後の11月のある日、突然夜中に腸が破れて義父は救急車で運ばれました。99歳の年で手術をするなど尋常ではない状況下でも、日を追うごとに管が外され、一時は意識が戻り、食事も取れるようになるくらいに回復しました。
「頑張る!」と言っていた義父でしたので、家族の誰もが復活を信じておりました。 しかし、今回ばかりは流石の義父も甦ってはくれませんでした。きっと、この世での業を終えたのでしょう。

 ホスピスに到着すると、義父は静かに横たわっていました。牧師さんが病室で祈りを捧げてくださり、看護師さん達と3人の息子夫婦で聖歌を歌って部屋を後にしました。義兄の計らいで、葬儀の会館に向かう前に、下鴨の義父のレッスン室に立ち寄りレッスン室の扉を全開して義父を向かい入れ、夫の計らいで義父が愛用していたスタインウェーのフルコンで渾身の祈りを込めて「祝福のうた」を献奏させていただきました。弾き終った途端、義父への感謝の思いが一気に溢れてきました。

 その日から3日間、会館には「祝福のうた」のCDが静かにずっと流れていました。息子3兄弟夫婦と孫4人と曾孫8人に囲まれて、本当にあたたかな愛に満ち溢れた3日間でした。私たちの仲人であり偉大な日本の作曲家松村禎三氏の初めてのピアノの先生であり、私の母も女学校時代に1度レッスンを受けた事があるという義父、私も大学受験の時に1度レッスンを受けた事があり私たちの灯台であった義父。100歳の表彰式の夢を叶え、天寿を全うした義父のその見事な生涯に、心からのブラボー!を贈りたいと思います。
2017年2月吉日
高橋晴美
♪ 新譜のご案内 ♪
 「あこがれ」女声3部「Silent Love 」女声3部、「夢咲き島」混声4部編曲が仕上がりました。
「あこがれ」はもともと混声4部のアカペラですが、「是非、女声3部を!」というリクエストで書かせていただきました。

 「Silent Love」は、ファーストアルバム「My Eternal Love」の中で花木佐千子さんが歌われて大人気の曲ですが、3声にすると色彩が出てサビの部分が広がり一層歌詞の意味が伝わってきます。

  「夢咲き島」は皆様良くご存じの通り、私が生まれて初めてマイクを持ってお客様の前で歌わせて頂いた曲です。2009年7月に沖縄てだこホールでのアンコールで、オーケストラと大合唱をバックに沖縄への感謝を歌わせていただいたのですが、アンコール3曲を終えたにも拘らず鳴りやまぬ拍手にどうしようか…と困っていたところ、夫の「皆さん、もう一度『夢咲き島』を聴きたいと思いません?」の一言によって会場から大拍手!アンコールで2回も歌わせていただいてしまったという、沖縄の方々のあたたかな手拍子と共に生涯忘れられない思い出となっている曲です。

 2011年5月の杉並公会堂大ホールでもアンコールでオーケストラと、合唱と、沖縄のエイサーが入って盛り上がり、その後も宮古島、今帰仁村、宜野湾と、沖縄各地で歌わせていただいて参りましたが、1番から合唱だけで歌うバージョンもあって良いのではないかと思い付き、今年の1月から編曲を始めやっと出来上がりました。
近い将来、エイサーを入れて、共に沖縄を想って声高らかに歌い上げる日を夢見ております!
*  嬉しいご報告  *

(2000年11月川越女子高音楽部の皆様と)
昨年秋、コーラスハルミオンの元常任指揮者小野瀬照夫先生からお電話があり、今年の7月に川越女子高校音楽部50回定期演奏会で、歴代の指揮指導者がそれぞれ1曲ずつ指揮をされるという企画があり、「母に贈るうた」を小野瀬先生が指揮されるという連絡をいただきました。 また今年に入り、小学校4年生で歌いたいと「ひとつ」の楽譜を注文された埼玉県千代田小学校の先生が、なんと!2000年11月にけやきホールで行った第4回高橋晴美の音楽ネットワーク親睦会コンサートで「母に贈るうた」「星降る夜に」を歌って下さった当時川越女子高校の生徒さん(当時の音楽部部長さん)であることが解かり、電話口で大変盛り上がりました。(夢飛行Vol.5,6参照)

 その上、先日は、川越女子高校で3年間「母に贈るうた」「星降る夜に」「ひとつ」を歌いましたという生徒さんから、ご自分の結婚式で「母に贈るうた」を再度合唱させていただきたいとのメールが届きました。
文化祭の「母に贈るうた」で涙の連鎖で歌えなくなったあの女子高生たちが、こうして愛と感謝の「種」を大事に育み続けて来てくださったのかと、何とも胸がいっぱいになりました。 あれから17年・・・。きっと、長い年月の間にそれぞれの人生で深みを増した「ひとつ」「母に贈るうた」になっているのではないでしょうか。メッセージを大事に受け止めてくださった方お一人お一人に、心から感謝申し上げます。そして、これからも愛を込めて作品を残してゆきたいとあらためて思います。 本年度も、どうぞよろしくお願い申し上げます。

高橋晴美

 高橋晴美さんの音楽は、曲や詞の素晴らしさは勿論のこと、作品の中に溢れている『愛と優しさ』に本当に心打たれます。『高橋晴美の世界』に出会った方々から、毎年、「癒やされた」「元気になった」「心が洗われた」「大切なものに気付かされた」等など感動と感謝の声が寄せられています。そして、晴美さんの音楽を聴いたり歌ったり演奏することで、愛の輪がどんどん広がって行っています。
 
 これからも一人でも多くの方に晴美さんの音楽に触れていただき、幸せを感じていただきたいと思いますと同時に、『高橋晴美の世界』を日本中、いや世界中に広めてゆきたいと思っていますので、今後共ご支援の程、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
 
 毎年2月は後援会の更新月にあたりますので、お手数おかけいたしますが、更新手続きをお願いいたします。又、新規入会の方もどうぞ宜しく御願い申し上げます。

 会報の発送は全て有志のボランティアで行われておりますが、郵送費、紙代、印刷費、ホームページの作成及び毎月の維持費などは会費によって運営されております。
 又、会員の皆様には、コンサートや新譜のご案内、CDリリース等も含め数々の活動状況を、メールや郵送で皆様方のもとに届けさせて頂くだけでなく、新しいCDやDVD、コンサートの割引、ホームコンサート、特別企画へのご優待等の特典もございます。
 
 『高橋晴美の愛と優しさの輪』をもっともっと拡げて行くために、今後とも皆様の温かい御支援のほど宜しく御願い申し上げます。
 
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尚、年会費は平成29年2月から平成30年1月までの1年分とさせて頂きます。メール会員をお申し込みのされる方は、必ずパソコンのメールアドレスを2回ご記入下さい。
高橋晴美の音楽ネットワーク後援会長:池田誠晴
副会長:藤原浩男
事務局:堀江熙、櫻田富恵
 

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