イギリス公演のご報告  高橋晴美 

 昨年の11月1日から7日のイギリス公演の旅は、同行していただくはずであったソプラノの小野寺貴子さんが、11月5日の大使館での本番の日がドイツ留学の試験日と重なってしまったため、急遽、目黒まりさんに行って頂く事になりました。そのため、10月26日けやきホールでの親睦会コンサートが終わって直ちに準備をしての出発となり、リハーサルはほとんど現地で行うという状況でした。しかし、10月半ば過ぎまでCDのレコーディング、トラックダウン、ミュージカル絵本「マックスのわくわくフレンズ」の10余曲の作曲録音、けやきホールのコンサート、そしてその合間を縫ってイギリスの大使館との訳詩やプログラム、挨拶文などの資料のやり取り、しかもまだ慣れないパソコンを使ってのメールのやり取りで奔走していた私にとって、7日間のイギリス公演の旅は、久しぶりにゆったりできた至福の時間でした。

112日 ケンブリッジ(ケム川に掛かっている橋という意)の下を流れるケム川には白鳥や鴨が憩うのどかな自然が広がっており、その向こう側に並んでいる古いレンガ造りのキャンバスは、まさに伝統の国、ハリーポッターの世界そのものです。紅葉が始まり赤く色づいた木の葉と一面広がる芝生の緑が美しく調和し、思わず、“来れて良かったねー”とまりちゃんと二人で感動しながら片道30分の道を歩いてリハーサル会場へと向かいました。

1131回目のコンサートはSt.Edmundus Collegeの教会でのお昼のショートプログラムコンサートでした。十字架を背にして歌うまりちゃんの横でピアノを弾くという、それは感動的なひと時でした。幼稚園からカトリックの四谷雙葉学園に14年間通っていた私にとって、教会は最も安らぐ場所であり、私の音楽の源でもあります。又、その日はイギリスでは珍しく一面の青空という事もあって、教会に差し込む光は、ちょうど『ひとつ』を歌い始めた時にまりちゃんの顔を照らしました。大自然の最高の演出も手伝って、本当に幸せな演奏のひと時となりました。


英語でスピーチする晴美さん

中でも“母に贈るうた”に涙された方が多く、演奏が終わってからその感動を伝えにいらしてくださいました。〜はたしてイギリスの方達に、始めて耳にする私の作品はどう伝わるのか。〜 一抹の不安を抱いていた私に、涙と暖かい人のまごころが帰ってきました。

115日 ロンドンの日本大使館でのフルプログラムコンサート。イギリスと日本の友好を図って、第一部は日本とイギリスの代表的な伝統音楽、第2部は「高橋晴美の世界」というプログラムでした。コンサート会場はパリの大使館に良く似ている造りなのですがしかし、大きな違いがありました。パリは床が板張りでしたが、イギリスは全面じゅうたん敷きなのです。教会での美しい残響のあるコンサートとは打って変わって、マイクを使っても残響のない厳しい状況が待っていたのです。まりちゃんにとっては試練でした。しかし私にも試練は待っておりました。英語でのスピーチです。本番直前まで紙を片手にぶちぶちReadingの練習です。おまけにコンサート後のレセプションでは、相次ぐ英会話攻めに頭の中はほとんどウニ状態!というのも、今まで行った国はロシア語、フランス語、ポーランド語、スペイン語というわけで通訳が入ってくれたため片言の英語で大丈夫だったのです。感動を伝えようとじっと私の目を見て語ってくださるのに、ほほえみながら“Thank you,”を繰り返すだけ。しかも感動が大きければ大きいほど早口でたくさん話してくださるので耳はダンボになり頭の中は余計ウニ状態になるのです。−英会話の必要性!!!−これが今回の最大の反省点でした。せっかくのご意見がわからないままでは意味がないという事で、夫の発案でアンケート用紙にご意見ご感想を書いていただくことにしました。


イートン校で

116日はウィンザーのイートン校でのショートプログラムでした。折り目正しい澄み切った目をしたイートン校の青年達とのふれあいが忘れられません。10代の頃から生徒の方が授業や先生を選択して自主的に学ぶという教育方針には考えさせられるものがありました。一人一人の個性や才能がこうして培われてゆくのか...。ウィンザー

城の向こうに沈む夕日が何かを語りかけるようで、妙に印象的でした。

一週間の旅を終えて感じた事は、何とこの国は伝統と自然と気品のある国だろうかと

うことです。道を渡ろうとした時、車は止まり、どうぞ、というように手招きする。譲る心ひとつにも大事な何かを感じさせられた旅でした。帰りの夜間飛行で眺めた真横に光る大きなオリオン座、そして夜明けに向かって変わってゆく空の藍、やがて鮮やかな紅の朝焼け、天国とはこのさらに上にあるのだろうか...。いつも仰ぎ見ているオリオン座を真横に眺めながら夜明けに向かって進んでゆくあの美しさは、人の生き死にさえ宇宙の運行のほんの一齣と思えてくるほど、何か途方も無く大きなものの存在を感じさせられました。ちっぽけだけれど大切な命を大きく生きたいなあ...と今もしみじみと思います。

[イギリス公演プログラム]

第1部

ふるさと 夏の思い出 まりととのさま あかとんぼ Home Sweet Home

Yesterday Amazing Grace

第2部

Silent Love 恋ほろりん Lost Love(たとえ愛が消えても)  海よりも空よりも

夢飛行 母に贈るうた ひとつ Cantare(歌よ大地に響け)

アンコール Hitotu(英語バージョン)

[イギリス公演アンケート報告]

日本大使館のご協力でアンケートをとらせていただきました。ネイティブの達筆な文字には判読不明なものもありましたが、キャンベルのりこさんの夫君デヴィットに助けられて、以下のようにまとめることが出来ました。

[質問]


    @このコンサートについてどう思いましたか?
    Aあなたのお好きな曲は?
    B他に何かご意見は?


@ とても美しく大変感動しました。私の両目から涙がこぼれました。歌もピアノも素晴らしかったです。
A 『母に贈るうた』を聴いた時こみ上げてくる深い感動に私の頬は紅潮しました。
B メッセージが大変純粋な音楽で表現されていて人間愛が中心である事を確信いたしました。音楽から私に向かって愛の波動が溢れてきました。すべての曲に感動いたしました。


@ 安らかで澄みきっていてすごい!
A 『恋ほろりん』、『Lost Love』、『海よりも空よりも』、『母に贈るうた』
B どうか、又帰って来てください。


@ 素晴らしかったです。大変音楽的でとても楽しめました。ピアノのプレイは最高です。感動させられ驚かされました。
A どの曲が良かったかを選ぶのは難しいです。でも中でも『ひとつ』と『母に贈るうた』は大変強烈で感動的でした。
B お二人の演奏をもっと聴きたいです。そしてお二人のご成功と幸せを願っています。このような素晴らしいコンサートに招待していただいた事に大変感謝しています。ありがとうございました。


@ 最高に美しい音楽、ほとんど完璧なセッティングの中での至福の機会でした。ありがとうございました。
A 『Lost Love』
B 日本の国の芸術的な贈り物を楽しむ素晴らしい機会でした。そして英国と日本の音楽愛をもたらしてくれました。このような会を再び催していただきたいです。



@ 夢のような、素晴らしい、エネルギーと演奏でした。
A 『ひとつ』『母に贈るうた』
B とても心地よいプログラムの夜でした。本当にありがとうございました。




@ とても純粋で人々に伝わったと思います。
A 『ひとつ』
B 私は劇的で、ゆったりとした、そして程よい重さで明るく、そして幸せな音楽を欲していました。


@ 実に素晴らしかったです。
A 『夢飛行』
B 喜びをありがとうございました。


@ とても楽しめました歌は素晴らしくそしてピアノ伴奏がとてもよくフィットしていました。
A 『恋ほろりん』『夢飛行』『まりととのさま』『アメイジンググレイス』
B 最後の『Cantare』のコーラスは正確に歌えるように練習をさせてほしかったです。


@ すごい!
A 『母に贈るうた』
B 素晴らしい雰囲気でとても親しみやすかったです。


@ 信じられない 本当に良かった
A 『母に贈るうた』
B ピアニストが偉大でした情熱的で愛に満ちた詩でした。


@ 実に美しい作品です。とても心にしみてきました。(彼女の世界をみんなで分かち合えました。)歌い手さんも魅力的で美しい声でした。
A 『ひとつ』、『Lost Love』。『ひとつ』は力強くエネルギーに満ちていて私の魂にダイレクトに響いてきました。 B CDを注文したいのですが詳しいことを教えていただけませんか。あなたの世界を私たちに分けてくださってありがとう。


@ コンサートは素晴らしく私はどの瞬間をも楽しみました。特に、『母に贈るうた』を聴いた時、自分が8年前に母を亡くした時は泣かなかったのですが、この曲は私の心に衝撃をもたらしました。
A 『ひとつ』『母に贈るうた』
B 雰囲気が本当に素敵でものすごく楽しめました。ありがとうございました。



@ このような愛に感無量です。私の目は喜びと幸せで涙があふれました。
A 『母に贈るうた』『夢飛行』
B どうかUK(英国)直ぐ来てください。ありがとうございました。



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