JAZZ in HARUMIを終えて

【未知の世界への挑戦・・・晴美の世界はジャズになるのか】

佐古 「高橋晴美が贈るジャズイン晴海」が終わって5日経ちました。このコンサートは今までとは違って女性だけのジャズオーケストラとの共演でした。ご苦労もあったと思いますが、晴美さんの今の心境をお聞かせください。

晴美
  新しい事への挑戦は苦労がつき物ですが、終わってみると本当に大きなステップを体験させていただけたなあ…としみじみ思います。

佐古
  それは私も同じ思いです。晴美さんの曲をビッグバンドで演奏すると聞いたときには正直どのように思いましたか。

晴美
  えーっ!ビッグバンド!?と今まで考えた事もない発想に大変驚きました。

佐古
  しかも、グレンミラーサウンドでのコンサートという提案には???でした。でもこれは面白いかもしれないと思いましたね。晴美さんもその思いはあったのではないですか。

エアロノーツのメンバーに囲まれた晴美さん


晴美  そうですね。はじめは驚いたのですが、グレンミラーサウンドというのは、懐かしさや温かさを感じさせるサウンドなので、ちょっと興味を持ちました。

佐古
  問題は晴美さんの曲がグレンミラーサウンドにアレンジできるかどうかでした。NHKのスタジオで前田憲夫さんに晴美さんのCDを聴いてもらいビッグバンドへのアレンジが可能かどうか意見を聞かせてもらいました。
結果は、アレンジはしない、いや曲が完成されておりアレンジしないほうが良いという意見でした。つまりビッグバンドにアレンジしても原曲以上のものは出来ないとの判断です。今考えると、さすが良く分かっていらっしゃると思いましたね。何しろそれからアレンジに苦しむわけですから。ある意味アレンジャーにも苦労をかけたと思っています。
私はアレンジャーではないので良く分からないのですが、最初にあがってきたカンターレのアレンジを聴いてえっ、これがカンターレなのと思いましたね。ジャズに編曲をするということはこんなにも変えることなのですか。

晴美
  そのアレンジャーがどういうスタイルのジャズを好むかにもよりますね。私も昔クラシックインジャズピアノ曲集のアレンジを担当させていただいたことがありました。3人で分担してそれぞれが自分の手がけたい曲を見つけてきてアレンジしたのですが三人三様でした。やはりその人の嗜好が出ます。

佐古
  私としては最低限原曲のイメージは壊して欲しくはなかった。アレンジャーとのやり取りでは晴美さんも相当苦労されましたね。


晴美
  そうですね。今までコンボ編成にしても合唱にしても又、オーケストラにしても全て自分でアレンジしてきましたので、他人に委ねる事の大変さを、初めて経験いたしました。何しろ最初にあがってきたカンターレは原型がほとんど分からないほどに変わってしまっていたので、この曲のファンの方にとてもお聴かせ出来ないと思う反面、アレンジャーになんと申し上げたらよいのか、その時から悩み苦しみの日々が続きました。待てど暮らせどアレンジが出来上がってこない。しかも、どんな風にあがってくるのか分からない。間に合うのか…いざとなったら…最悪の状況を覚悟しながら命が縮む思いでした。アレンジャーのかたにもいろいろと書き直しを要求し、ご苦労をおかけしました。

佐古
  でもこれはいい経験になりましたね。これからは苦労してでも自分でアレンジしょうと思ったわけですから。最後の追い込みでリハーサルまでに良く間に合いました。たいしたもんです。

晴美
  今思うと、一番大変であった事が、結果的には一番の収穫となりました。6年前から楽譜ソフト「Finale」を学びたいと思い続けておりましたが、まさかリハーサルの前日にスコアーの直しを自分が「Finale」で音符を打ち込みパート譜まで印刷するなどとは、想像もできなかった事です。困っている私のために、一週間足らずで「Finale」のマニュアルを読み、打ち込みなおしたスコアーデーターを届けてくださったエンジニアーの黒田さんには本当に頭が下がります。リハーサル前日にデーターを受けとり、音符の直し方、パート譜の出し方を教えていただきました。それから夜を徹してパソコンに向かい、全てのパート譜の点検が終わったのは明け方でした。ここまで切羽詰らなければ、おそらくまだ等分先まで「Finale」は手掛けてなかったと思います。

【わくわく ドキドキ・・・なにが起こるかわからない】

佐古  そういう思いまでしてこのコンサートをやり抜こうとした、それには訳があります。出発点は去年の東京芸術劇場での「愛のコンサート」にあったような気がします。あのコンサートは大成功だったと各方面の方々から評価をいただきました。それゆえにあの後にやるとなるとなかなか難しい。確かに「オーケストラと歌の夕べ」はあの時点では最高のコンサートだったと思う。でも私としては晴美さんの音楽のすべてを表現していない。そう思っていました。つまり遣り残したことがあったわけです。それが何かをずーっと考えてきました。「JAZZ in HARUMI」はその絶好の機会だと思ったのです。
 ところで晴美さんはどうだったのですか。わくわくする部分もあったと思うのですが。

晴美
  確かにありました。特にビッグバンドと共演した「Inviting Beat」などは、今回発表しなければ皆さんに聴いていただく機会はないと思ってプログラムに入れた曲なのですが、この曲を弾いているとき、身体の中から湧き上がってくるわくわく感を感じて弾いていました。ラテンと4Beat が交互に出てくるという、私の作品の中では他に類のない曲ですから私自身も新鮮でしたし、弾ける喜びにあふれていました。又、プログラム最後の「遥かなる大陸」で、エアロノーツのピアニストと連弾したのは実に楽しかったですね。10日は遂に立ち上がって弾いてしまいました。
 いつものコンサートをお聴きになっているお客様が「今日のコンサートは楽しかったわー、晴美さんの本領を発揮していたわね」と話しながらお帰りになったと聞いた時、やってよかった…と思いました。
    与えられた機会を受け止めてゆく事は、みんな意味があるのですね。


【Be in Voices との出会い・・・今後何か出来そうな予感】

Be in Voicesと晴美さん(楽屋で)

佐古  6月9日の特別出演のBe in Voicesは良くがんばってくれましたね。何しろ大阪から晴美さんの曲を歌いたいと自腹で駆けつけてくれたのですから。よっぽど晴美さんの曲に惹かれたのだと思います。晴美さんのCDを聴き、自分達でアカペラにアレンジして録音したCD−Rを送ってきたのが出演のきっかけでしたね。荒削りではあったけれど今までにない新鮮さを感じました。

晴美
  嬉しかったですね。彼らのひたむきな姿勢に心動かされました。

佐古 アレンジは全てお任せでしたね。

晴美
  コンサート直前で時間がないと言う事もありますが、息のあったグループ独特のものを感じ、これはお任せした方が良いと思いました。候補曲の合唱譜と音源を送り、アレンジが出来た時点で、MDに録音して5月23日のレッスンまでに送っていただくことに致しました。
佐古  その間晴美さんとのやり取りがあった訳ですが、結局コンサート前日のリハーサル終了時ですね、曲目が決まったのは。

晴美  ええ、送られてきたMDを聴いて予定していた曲を入れるかはずすか
前日まで選曲に悩みました。総監督の本郷さんにも来ていただき、レッスンを聴いていただきました。でもコンサート前日、はるばる大阪から早朝の新幹線に乗って笑顔でオフィスに来てくださり、私の要求に一生懸命耳を傾けて歌ってくださる彼らの姿を見て、私たちの気持ちは決まりました。予定通り、全曲歌っていただこうと。

佐古  本番ではお客さんの反応も良かった。私同様にアカペラのLost Loveは新鮮に感じたでしょうし、アレンジも彼らの特徴を良く引き出していました。とにかくエアロノーツを初め出演者はその持ち味を出してくれたと思います。
    ところで、今回のコンサートで改めて感じた事はご本人の前では言いにくいのですけれど、晴美さんのピアノの魅力ですね。私は晴美さんのピアノを聴く機会をもっともっと増やすべきだと思いました。

晴美
  ありがとうございます。クァルテットのメンバーが素晴らしいのです。私の音楽を表現するにはビッグバンドだけでは足りない、とクァルテットを入れてくださった佐古さんのおかげです。大和田さんとのコラボレーションを皆さんとても喜んでくださいました。彼のサックスの音色は本当に美しいです。何より嬉しかったのは、説明をしなくてもその曲が持つ「命」を大切にして演奏してくださることです。アンコールの「Delight Song」は皆さん大変喜んでくださいました。彼には是非、今後もお手伝いいただきたいと思っております。


高橋晴美クァルテットとまり遥


佐古  まだ先の話になりますが、大和田さんには10月のネットワーク創立6周年記念パーティや12月10日の広島でのコンサートに出てもらおうと交渉しているところです。かれのスケジュールしだいです。最後に晴美さんから一言。

晴美
  まず、このコンサートに携わってくださいました第一生命ホールの関係者の方々、音響照明舞台のスタッフの皆さんに、心より感謝御礼申し上げたい気持ちで一杯です。
今回のコンサートでは、いろいろな意味で初めての体験をさせていただきましたが、〜前向きに生きると言う事は、挑戦する勇気を持ち続ける事なのかもしれない〜、というのが実感です。特に、高橋晴美の可能性をどこまでも引き出そうとしてくださる佐古さんをはじめ、一番辛い時に陰で支えてくださったサポーター、友人に「本当にありがとう」と申し上げたい。
そしてJazz in Harumi という新しい企画に対し興味を持ち、応援に駆けつけてくださったお客様に対し、心より深く感謝御礼申し上げます。踏ませていただいた貴重なステップを血肉にして、是非次に生かして歩んでゆきたいと思います。




●夢飛行/INDEXへ

●TOPへ