ポーランドでのレコーディング紀行
Part2

 3月31日〜4月6日、ポーランドのワルシャワにて、現地オーケストラの伴奏でレコーディングされました。その時のようすを、晴美さんの紀行文にて、みなさまご一緒にお楽しみ下さい。 今回は、その2です。

4月4日=================

  8:00にまりちゃんのモーニングコール。
 
今日は夫がワルシャワへ着く日である。指揮者の天野さんが夫を迎えに空港へ行ってくれた。10:00に天野さんと夫がホテルのロビーに現れた。顔をみてほっとしたが、何かあったらしい。聞けばスーツケースがないと言う。内心「またか…。」夫は必ず何か起こす人なので、ハプニングには慣れている。早速調べてみると、どうやら次の便で来るらしい。とりあえずほっとして、今日の予定の打ち合わせをするために、喫茶店に入る。

  まず、昨日のレコーディング報告をする。3曲録るはずの予定が、既に第1日目で 2曲しか録れなかったこと。又、その曲でさえ、納得のいくレコーディングはできなかったことを告げる。そして、今後どういう順で録ってゆくかを決める。 その結果、 “今日−虹を渡る日”,“ひとつ”、“カンターレ”の順で録ることにした。

  11:30からリハーサル室でレッスンをし、1:30に昼食に出る。その後、一旦ホテルに戻るが、パート譜のチェックもあるので、間もなくホテルを出て、フィルハーモニアへと向った。 4:00にフィルハーモニアに着いて、まず、ミキシング・ルームに行く。エンジニアのサーシンに、昨日のテイクを聴かせて欲しいと頼んだ。やはり“父の手”のハープ
と歌とのデュオの所が気になる。ペダル切り替えのタイミングが遅くなり、テンポがどんどん遅くなっていっている。とても音楽の内面まで表現する余裕がない。私は3日目にこの部分をもう一度、今度はピアノで弾いて録り直す事に決めた。与えられた時間の中でやらなければならない。こうなったら、優先順位をつけて、思いきって3曲のレコーディングを切り捨てる事にした。

天野さんとミキシングルームで

  5:30からのレコーディング。2日目の最初の曲は“今日−虹を渡る日”だ。以前の打ち合わせで、プレイバックを聴く時間の無い事、全体のバランスを聴いて指示しなければならない事、又、ぶ厚いフォルテッシモの音が欲しいなどの点から、ワルシャワフィルのピアニストに弾いてもらう事に決めていた。

 この曲がオーケストラで鳴る瞬間をどれほど夢見ていたか、ものすごい緊張感の中で、ホールにイントロが鳴り始めた。感動と喜びと研ぎ澄まされた耳でのチェックと、入り混じった複雑な心境だ。ホールの響きはえも言われぬものがある。このまま、客席でずっと聴いていられたら、どんなに幸せだろうかと思う。でもそんな悠長な事はしていられない。すぐ、ミキシング・ルームに走って行って、ヘッドホンをつけ、オーケストラのスコアを見て、えんぴつを片手にチェックが始まる。トークバックで指示する。テンポがどんどん失速してゆき納得のいくテイクが録れない。1番困った事は、エンディングのピアノがぼろぼろなのだ。確かに音量はある。しかし、音を外すまいとして、オーケストラとずれて、リズムがばらばらになってしまうのだ。トークバックは殆どピアニストへの要求となってしまった。仕方なく休憩をとり、団員が休憩している間、私はピアニストのレッスンをしに、ステージへ降りて行った。

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