晴美: | お疲れ様でございました!長い道のりでございました。黒田さんの後を継ぐということは並大抵の事ではありませんが、何だか運命的なものを感じますね。 |
堀内: | 黒田さんには、僕、かばん持ちでついていきます! って言っていましたけど、もっともっと元気でいていただきたかったです。 |
晴美: | いつもお二人が楽しそうに作業しているのを見るのが好きでしたし、打ち上げもいつも専門の話で盛り上がっていましたよね! |
堀内: | 黒田さんと僕だけが理系なので、話していて本当に楽しかったです。
黒田さんとは、コンサートの事前打ち合わせ編成確認くらいで、後は僕が機材を梱包して送り、現場でせーので始めて終わり。マイクを立てたりはしますけど、黒田さんが調整卓の前で調整しているのを見ていたり、ピアノのマイクの微妙な位置、ドラムのマイクのセッティングは全て黒田さん任せでした。 結線して、音が出るところまでは僕でも苦労なく出来るけど、黒田さんはMixを始めて、あるところから「音」が「音楽」に変わるんです!それが黒田マジックなんです。マイクの位置も黒田さんはこだわっていました。より良い音はどこにマイクを持っていけばよいか。だから黒田さんはピアノのマイク位置を何回も聞いては直しに行ってました。ピアノによっても、マイクの種類によっても、ホールによっても毎回違う。場所を問わない、機材を問わない、弘法筆を選ばず、ある機材を最大限に生かして音作りをする方でした。 体育館でも、畳の上でも、すり鉢状のホールでも。 |
晴美: | 東日本大震災の慰問コンサート思い出しますね。寒い福島の体育館、仙台の畳の部屋…。 京都アルティーではすり鉢状の客席とステージを一人で何往復していたでしょうね。コンサートホールがスポーツジムと化してました(笑)黒田さんが作ってくださる音に包まれてピアノを弾くのは得も言われぬ幸せな時間でした。 |
堀内: |
本番は本番の神様が降りて来るんですよ。ミュージシャンも本気、それを反映してくれるんです。勿論、リハーサル時に全曲細かな音調整をメモに書いていました。 黒田さんはエンジニアという肩書を持ったミュージシャンなんですよ。じゃなきゃ、出来ないですよ。ピアノの鍵盤がパソコンのキーボード(調整卓)なんですよね。 リハーサルから本番は大きくは変わらないけど、本番は事件が起こる。 音楽は基本は「即興」ということを黒田さんは解っている。毎回違うという事。未だ解らないのが、本番で「音」がどこから「音楽」に変わるのかが解らない。 コンサート終了後、最後の最後まで機材を運んだり25mのマルチケーブルを巻いてくれるし、クルーズの時なんて一人何役も。変にお高くとまっているとかではなく、能力はずば抜けているのに普通の人に徹している。 |
晴美: |
本当に、誰からも愛された巨匠でした。その黒田さんがいつだったか、「俺の録音技術のノウハウを堀内さんに伝授しようかと思うのだけど、どうかな?」と聞かれたことがあります。 黒田さんは定年後、音にこだわる私がスタジオ代が嵩んで大変な思いをしないようにと、プロツールスを勉強してくださいました。私が皆さんにお伝えしたいと思っている「愛」を、最高の音にしてお届けし、皆様に喜んでいただけることを自らの喜びとして…。そんな黒田さんにとって、他に生業を持ちながら、音楽が好きで、機材を提供してくださり、被災地支援コンサートを始め地方のコンサートを自腹で一緒に回ってくださった堀内さんは、黒田さんの意志を継ぐ特別な存在だったのでしょうね。 |
堀内: | 11月半ばくらいだったか、「スタジオを押さえようと思うのですが、土日でないとだめですか?」というメールが来て、「いえ、有給休暇があるので大丈夫です!」とお返事したけど、その返信は返ってこなかった…。 |
晴美: | 早すぎましたよね。伝授していただきたかった…。 |
堀内: |
昨年の初めに黒田さんが残したプロジェクトを聴くために、僕MacBookProを買いました! 今までは、WindowsのSamplitudeを使っていたんですが、本格的にプロツールスを使い始めました。けやきホールはMacBookProで録音しました。会場の音はサウンドマンにお任せでした。録音作業と出音の作業は一緒には出来ないので。クオリティーが落ちるので。 |
晴美: | そう、黒田さんもそう仰ってました。両方は出来ないと、はっきり言われました。 |
堀内: |
黒田さんは目から鱗的なことも何回かあって、「こんなことやっていいの!?」みたいなことをやってのけてしまう。サウンドマンの人はやらない。サウンドマンは守り、黒田さんは守ってもいない攻めてもいない、やりたいことをやっているだけ。だから、エンジニアという看板を背負ったミュージシャン。 晴美先生とのやり取りでも、結構意見が一致して趣味が合う、たまに合わないことがあってもそれが晴美先生の言うように直していくと音楽の形がくっきりと見えてくる。やっぱり、作った人にはかなわない。目から鱗。黒田さんとは別の意味で、音楽の構造がピンポイントでわかる。兎に角楽しかった! |
裕: | なるほど、それで今回の録音はどんなふうにして行ったのですか? |
堀内: |
我が家のマイクプリを総動員しました。僕は今回録音だけだったのですが後処理用にリバーブとイコライザーは新しいソフトを買いました。会場は生音+PAの音で聴いている、ビデオではPAの音しか入っていない、そのギャップは大きいと思います。そこで、①各楽器、ボーカルのマルチマイクの音②アンビエントマイク(会場音)③当日の会場のスピーカーに出している音(2Mix) この3種類のバランスを取りました。アカペラはあまりお風呂屋さんにはなりたくないし、楽器、ソリスト、ハルミングとの音量のバランスをとる。 合唱団とソリストやハルミングのバランスをとる。晴美先生と何度も聴いてはやり直し、月に1度か2度のペースでしたが、1年半かかりました。黒田さんだったら1~2か月で出来たでしょうけど。 |
裕: | 晴美先生の音楽は外注では出来ない。晴美先生の音楽を解っていないから…。時間がかかっても、堀内さんに頼むしかない。 |
堀内: | 夢を見ました。「約束」の音が出来上がって、PlayBackして思い通りの音が出来ている。黒田さんがOKしてくれているような…実際は、そこまで出来てはいませんが…。 |
晴美: | 堀内さんに「約束」だけ入れるのやめましょうと言ったことがありました。この曲だけ、会場音を減らされてあまりに生々しくて恥ずかしくて…、そうしたら堀内さん「約束」を入れないのだったら、このDVDは作るのやめましょう!と間髪を入れずに応えられて…。 |
堀内: |
「約束」は生々しい音が聞こえないといけない。最初に息を吸う音まで入っている。想いが乗った音が、人の心を打つ。その音を残したかった。あそこが到達点、あそこに至るためのコンサート、極論するとあの1曲を演奏するためにあのコンサートをやった。みんなの想いを考えると、そこへ凝集されていると思う。修正はしていない生の演奏。赤裸々が良かった。感情の吐露だから、そのままじゃないといけないんです。それがライブなんでしょうね。 想いが隅々まで込められていて、黒田さんの「歌は味だ」です。 |
晴美: | 弟が、途中からドアップで私の横顔を映していて、「やめて~!」と思わず心の中で叫びましたよ。 |
堀内: | 晴美先生のコンサートは、いつも黒田さんが卓をいじりながら泣いていた。自分もそういう気持ちになって黒田さんを見ると黒田さんも泣いていた。 |
裕: | 晴美先生の音楽に対して、今後堀内さんはどのようにしたいと思っていますか? |
堀内: |
晴美先生とは趣味も合うけれど、曲がやっぱりいい曲!愛と情熱が無いものは音楽ではない。僕のライフワークだからいい曲をやりたい!黒田さんの僕への宿題だなあ…。 ノウハウを伝えることなく逝ってしまって、結局自分で探し出すしかない。お前には解けるだろう…と。 結果は黒田さんと違うと思いますが、あの世で議論出来たら楽しいだろうなあ。 晴美先生の音楽は、僕の一生のライフワークの大きな柱だと思います。 「愛のピアノⅡ」をあらたに起こしたいです!愛のピアノは黒田さんが作ったけれど、僕は新たにやりたい!これからのコンサートも勿論ご協力させていただきたいと思います。おこがましい事言っちゃいますけど、是非「愛のピアノⅡ」をやりたいです!是非よろしくお願いいたします! |
晴美: | 黒田さんとけやきホールで録音した「愛のピアノⅡ」の音源が入ったハードディスクが、結局見つからなくてね…。あれから随分と年月も流れ、色々な悲しみ苦しみを乗り越えて来て、たぶんあの時と今とでは、演奏も違うのではないかなあ…。この年になってこそ表現できる「愛のピアノ」を奏でたいと思います。是非、よろしくお願いいたします! |
裕: | いいねいいね!今度は、ピアノだけでなく他の楽器を入れたら? |
晴美: |
黒田さんには、ストリングスをかぶせたいと話していたのだけど、いずれにせよ第2弾は是非やりたいです!何だかわくわくしてきましたね! あらためて、本当にお疲れ様でした!ありがとうございました!乾杯! |
堀内:
裕: |
乾杯!お疲れ様でした! |
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